オーストラリアで雇用契約(雇われて働くこと)で働く際に必ず理解しておく必要のある契約形態。これには
- Full-time(フルタイム)
- Part-time(パートタイム)
- Casual(カジュアル)
の3つがあります。
違いは、働き方、給料だけでなく自分から辞める場合(退職)、雇用主から辞めさせられる場合(解雇、契約終了)にまで関係してきます。働き始める際には自分がどの雇用契約なのかを知ってから働く必要があります。
ちなみにABNで働くというのは、雇用契約ではなく自営業の扱いとなります。自営業で働くことにし、雇用のきまりを避けようとする目的の雇用主もいるので注意が必要です。
各雇用形態の違いを見ていきましょう。
オーストラリアの3つの雇用形態
Full-time(フルタイム)とは?
特徴
- 週38時間前後の勤務
- 勤務時間、曜日が固定されるのが一般的
- 法的保護がある
- 安定した収入
メリット
- Annual Leave(有給休暇)
- Sick Leave(病欠休暇)
- 安定したキャリア形成が可能
向いている人
- 安定収入を重視したい
- 長期的に働きたい
- 永住ビザ、ビジネスビザの取得を目指している人
日本の正社員のイメージです。
フルタイムは余程の戦力となり、雇用主に必要とされていないと人件費が高くなるので、フルタイムの仕事を見つけるのは容易ではありません。
Part-time(パートタイム)とは?
特徴
- 週38時間未満の勤務
- 勤務日数、時間が少なめ
- シフトが固定、半固定の場合が多い
メリット
- Annual Leave(有給休暇)
- Sick Leave(病欠休暇)
- フルタイムと同様に法的保護がある
- 祝日もいつもの勤務シフトないなら給料は払われる
- 仕事と学業、家庭、副業といった他のことと両立がしやすい
向いている人
- 学生、主婦、子供が小さい方
- 育児や他の仕事と両立したい人
- ほどよい安定と自由が欲しい人
フルタイムの38時間未満の労働時間のバージョンとなります。
Casual(カジュアル)とは?
特徴
- シフトが不定で保障されない、クビになる可能性あり
- 勤務時間が週ごとに変わる
メリット
- 時給が25%増しで高い
- 柔軟な働き方ができる
- 掛け持ちしやすい
注意点
- 有給休暇、病気休暇 なし
- シフトが保証されず、急に減ることもある
- 急にクビになることもある
向いている人
- 短期で稼ぎたい
- ワーホリ、学生ビザ保持者
- 自由なスケジュールを重視したい人
時給は高いが安定しないのが特徴です。日本のアルバイトのイメージです。
自分から辞める場合のルール
フルタイム、パートタイム
- 1〜4週間前のNotice(事前通知) が一般的
- 雇用契約、Awardに従う必要あり
- 未消化のAnnual Leaveが払われる
Sick Leaveは支払われない
カジュアル
- 原則Notice(事前通知)不要
- 有給休暇の清算なし
雇用主側から辞めさせられるケース
オーストラリアでは、雇用主が自由にクビにできるわけではありません。法律で定められたルールがあります。
Termination(解雇)
正当な理由の例
- 業務能力不足
- 勤務態度、規律違反
- 重大な不正行為(Serious Misconduct)
雇用主の義務
- Notice of Termination(解雇通知)勤続年数により1〜5週間以上
- または Notice分の給与支払い(Payment in Lieu)
Redundancy(リストラ、職務消滅)
特徴
- 会社都合でポジションが不要になった場合
- 個人の能力とは無関係
権利
- 条件を満たすと Redundancy Pay(解雇補償金)
- 勤続年数に応じて支給額が増える
Casualの契約終了
- シフトが入らなくなる=事実上の終了
- 解雇通知、補償は原則なし
ただし 長期Casual は例外になることもあり
ビジネスオーナー様にとってはフルタイム、パートタイムの場合は、採用してしまったらシフトを保障したり、簡単に辞めさせるのが難しくなりますので、採用時の判断が非常に重要になってきます。よって、柔軟にシフトに入れられたり、仕事ができない場合に解雇できるカジュアル雇用がおすすめです。または最初にカジュアルで雇いテスト期間を設けて考えるという手もあります。当然ですが、試用期間は無給というのは違反です。
税金上の扱いとスーパーアニュエーション
タックスリターンでの申告、税金上の扱いに関し雇用形態は関係ありません。どの雇用形態でも給料を申告することに変わりはありません。ただ、一部の退職金は非課税となったり税控除があるものもあります。
同じ会計年度に複数の雇用主の元で働く場合(同時でもそうでなくとも)2つ目以降全て、または全ての仕事において高い税金の天引きを使う必要があります。これをしないとタックスリターン時に返金ではなく、支払いになることが多くなります。
スーパーアニュエーションも雇用形態に関係なく給料の12%が払われます。
Payslip(給与明細)、雇用契約書は必ず保管しておいてください。Payslipはタックスリターンでも必要となることがあります。
雇用形態別|退職・解雇ルールまとめ
| 項目 | Full-time | Part-time | Casual |
| 事前通知 | 1〜4週 | 1〜4週 | 原則なし |
| 解雇通知 | あり | あり | 原則なし |
| 有給清算 | あり | あり | なし |
| Redundancy Pay | 条件付き | 条件付き | 原則なし |
| Superannuation | 支払義務あり | 支払義務あり | 支払義務あり |
よくある問題点
- パートタイムなのにシフトがバラバラだったり、祝日で働いていない日の給料が払われない。
- シフトが決まっておらず、カジュアルのような働き方なのに時給が25%増しになっていない。
- フルタイムの年収制だからと残業代や祝日割り増し給料がカウントされない。
- パートタイムで雇われたのに、雇用主に事前通知することなく突然退職。
働く際はこちらのオーストラリアで働く際にチェック – ブラック企業の可能性があるかもも読んでみてください。
特に飲食店関係のビジネスオーナー様にとってこれらは難しい問題です。人を雇ってビジネスをされている方は弊社で税務、会計業務を引き受けるのでお問い合わせください。働いている皆様もタックスリターン時にこれらのご相談に乗ることも可能です。

