オーストラリアで働く際、雇用条件や給与の扱いなどが曖昧なまま仕事を始めてしまうと、思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。特に留学生やワーキングホリデーの方は「こういうものなのかな」と思ってしまいがちですが、実は違法なケースも多くあります。
ここでは、この会社ちょっと怪しいかもというチェックすべきポイントを紹介します。
ちなみに雇用とは雇われて働く、という意味です。
1. カジュアルとパートタイムの違いが説明されない
求人時や面接でカジュアルかパートタイムかの説明がない場合は要注意です。パートタイムにはAnnual Leave(有給休暇)やSick Leave(病欠休暇)などの権利があり、シフトもある程度固定されています。一方、カジュアルは柔軟ですが、その分休暇の権利がなく、代わりに時給が25%増しになります。これらを説明しない雇用主はカジュアルなのにパートタイムの給料で済ませよう、有給休暇、病欠休暇なしで都合よく利用しようとしている可能性があります。
2. ABNで働いてほしいと言われる
単発イベントや飲食の仕事などで「ABNで働いて」と言われたら要注意。個人事業主扱いにすることで、雇用主が最低賃金やスーパーアニュエーション、労災の支払いを逃れるケースがあります。実質的に雇用関係があるのにABNを使うのは違法行為です。
3. ペイスリップ(給与明細)をもらえない
ペイスリップを渡すのは雇用主の義務です。支払いが現金でも振込でも、毎回給与明細を発行しなければなりません。もし「今週は出せない」「後でまとめて渡す」などと言われる場合は要注意です。
4. 雇用契約がない、または曖昧
口頭での約束だけで働いていませんか?オーストラリアでは書面による雇用契約が基本です。勤務時間、給与、役割、雇用形態などが明記されていない場合、後々トラブルになることがあります。仕事の紹介の仲介者などがいることがありますが、自分が誰と契約しているのか、を分かっておく必要があります。
5. 手書きのペイスリップ
今どき手書きのペイスリップはありえません。というのも、雇用主は必ず給与(会計)ソフトを使って支払いを管理、ATOに申告する必要があるからです。
6. タックスファイルナンバーやスーパーアニューエーションについて聞かれない
正式な雇用であれば、タックスファイルナンバーとスーパーアニュエーション、口座情報を必ず聞かれます。これらがないと給料を払ったりといった手続きができないからです。これらを求められない場合、非公式な支払いの可能性があります。
7. 出来高払いのみ、基本給がない
ファームなどでの仕事で「1バケツいくら」「1箱いくら」という完全出来高払いのみの契約も注意が必要です。成果に応じた支払いはOKですが、実際に最低賃金を下回ってはいけません。労働時間に対して公平な支払いがされているか確認しましょう。これは美容系、マッサージなども同様です。
8. 現金払い
現金で払うこと自体は違法ではありません。しかし、銀行振込ではなく「現金で渡す」と言われたら、記録が残らないため働いていないことにされるリスクが高いです。キャッシュジョブと呼ぶことがありますが、本来このような言葉があるのがおかしい。本来、雇用主側も経費処理のために振込を行うのが一般的です。現金払いにこだわるのは、働いていないことにして、最低賃金逃れや不正を隠している可能性があります。
9. トライアルという名の無給労働
トライアル期間(試用期間)があっても、最低賃金は支払われるべきです。「お試し勤務」や「見習いだから無料で」と言われたら、それは違法行為の可能性が高いです。
10. 責任ある仕事をしているのに最低ランクの給料
店を任されたり、鍵の管理・レジ業務など責任ある仕事をしているのに、一番下の時給を支払われている場合は不当です。最低賃金は職務レベルによっても変わります。責任が重ければその分上のレベルの最低賃金が適用されないといけません。レジを任されている、お店の開閉店を任されているなどです。
11. 土日祝の給料が平日と同じ
オーストラリアでは週末・祝日勤務にはペナルティレート(割増賃金)が適用されます。「どの日でも同じ給料」と言われたら、雇用主が制度を無視している可能性があります。
12. ボランティア、ワークエクスペリエンスという名の無給労働
ボランティアやワークエクスペリエンスという名目で働かせる場合も注意が必要です。教育目的で正式に認められたプログラムであれば無給もOKですが、実際には通常の労働と変わらない作業をしているなら、有給でなければなりません。弊社でもよく会計職のインターンシップを頼まれますが、このような理由からお断りしています。
まとめ
「給料が低い」「契約書がない」「ペイスリップがない」そんな職場には必ず理由があります。働く側も基本的な知識を持っておくことで、自分の権利を守ることができます。不安を感じたら、Fair Work Ombudsman(フェアワーク)の公式サイトで情報を確認し、相談してみましょう。
Fair Work Ombudsmanの通告窓口はこちらです。