最近の不動産価格の上昇で中々マイホームを購入といっても、値段が高く手が出ない状況です。レントで借りるにしても困難という、住む場所を探すのににっちもさっちもいかない状況のオーストラリア。
マイホームをローンで購入といっても全額ローンは貸してくれないので頭金が必要です。頭金は通常20%。
ただ、
最近オーストラリア政府が始めた5% Deposit Schemeを使えば、 5%の頭金でマイホームを購入できるようになりました。シングルペアレント(片親)家庭の場合は2%となります。
2025年10月から制度が大幅に拡充され、所得制限が撤廃、価格上限も引き上げられ、これまでよりも多くの方が対象になっています。
5% Deposit Schemeとは何か
正式名称はAustralian Government 5% Deposit Schemeといい、オーストラリア政府が初めてのマイホームの住宅ローンの一部を保証人としてサポートしてくれる制度です。これは通常必要な頭金20%ではなく、5%の頭金、シングルペアレント(片親)家庭の場合は2%の頭金でマイホームを購入できる制度です。
通常、住宅を購入するには購入価格の20%を頭金として用意しないと、ローンが下りないか、銀行からLenders Mortgage Insurance(LMI)という高額な保険料を請求されることがあります。
このLenders Mortgage Insurance(LMI)とは住宅ローン保険のことで、頭金が20%未満の住宅ローンを借りる際に、銀行(貸し手)を保護するための保険です。
家を購入した後、もしローンの返済ができなくなった場合、銀行は物件を売却して損失を回収しようとします。しかし、頭金が少ない=借入額が多いと、銀行としては売却しても全額回収できずとりっぱぐれるリスクがあります。そのリスクをカバーするのが Lenders Mortgage Insurance(LMI)です。
この5% Deposit Schemeを使えば…
- 頭金わずか5%
- 上記のLenders Mortgage Insurance(LMI)が不要(数千〜数万ドルの節約)
- 早くマイホームを手に入れられる
という大きなメリットがあります。
申請条件
- 初めて住宅を購入する人(First Home Buyer)
- オーストラリア市民権者または永住ビザ保持者
- 自分が住む家であること(投資物件は対象外)
- 頭金が最低5%以上あること
- 新築でも中古でもマンションでも一軒家でもよいが、購入価格が地域の上限以内であること
- 銀行の返済能力審査に通過すること
- 政府指定の金融機関からローンを申し込むこと
条件をクリアしているかは
2025年10月からの主な変更点
改定項目 | 内容 |
所得制限 | 撤廃(年収の制限がなくなりました) |
価格上限 | 大幅アップ(地域別に引き上げ) |
枠数 | 実質無制限(早い者勝ちの時代は終わり) |
対象者 | 初めて住宅を購入する人(First Home Buyer) |
申請方法 | 参加金融機関を通して申請 |
地域別の購入価格上限一覧(2025年10月以降)
州、地域 | 都市部上限 | その他地域上限 |
NSW | $1,500,000 | $800,000 |
VIC | $950,000 | $650,000 |
QLD | $1,000,000 | $700,000 |
WA | $850,000 | $600,000 |
SA | $900,000 | $500,000 |
TAS | $700,000 | $550,000 |
ACT | $1,000,000 | — |
NT | $600,000 | — |
シドニーやメルボルンのような不動産価格が高い場所の場合は上限額が高くなっています。ただ、不動産価格高騰の今、この額で買えるのかよ、という数字ではあります。QLDのケアンズの場合、一軒家を700,000ドルではなかなか買えなくなっています。
対応している主要金融機関
この5% Deposit Schemeは政府が認定している金融機関を通して申請します。代表的な金融機関はこちら。
Commonwealth Bank | Australian Military Bank |
National Australia Bank | Bank Australia |
Bendigo Bank | MyState Bank |
Teachers Mutual Bank | Regional Australia Bank |
Westpac | Defence Bank |
対応している金融機関はこちらでもチェックできます。
当然通常のローンと同じで金融機関により審査や手数料、金利は異なります。
実際どのくらい違うのか
不動産価格爆上がり中のブリスベンで 700,000ドルの住宅を購入する場合で比較してみましょう。
通常の住宅ローン | 5% Deposit Scheme利用 | |
頭金 | $140,000(20%) | $35,000(5%) |
LMI | 約$15,000 | $0 |
必要な自己資金 | 約$155,000 | $35,000程度 |
差額 | — | 約$120,000節約 |
つまり、たった数万ドルの頭金で数年早くマイホームが持てる計算です。
注意点
- 5%の頭金は少なくて魅力的ですが、当然その後の返済額は多くなるので月々の返済額も増える点に注意。
- 物件価格が上限を超えるとスキームの対象外になるので、購入したい不動産が上記の地域の価格上限内か注意。
- スタンプデューティー(Stamp Duty)、登記費用、弁護士費用など不動産購入に伴う費用は通常と同じ。
ただし、多くの州でマイホームだとスタンプデューティ-が安くなります。 - 対応している金融機関(Participating Lenders)を事前に確認。
現在頭金に使う貯金はあまりないが、収入がそれなりにある方は返済能力があるので、収入はあるのに頭金を貯めるのに時間がかかるから買えない、といった場合にとても有効な制度です。
まあ、もちろんそうまでマイホームがほしいか、ということもあります。また、不動産価格が上がり続けているからよいですが、下がった時は政府がローン返済の足りない部分を税金で補てんするのかというのもあります。
また、始めてのマイホーム購入の場合に、特別にスーパーアニューエーションを引き出せる制度First Home Super Saver Schemeもあります。